フェチはブーツからはじまった

 HDさんという海外のイラストレーターがchikaさんへのオマージュとして描いたこの作品がたいへん素晴らしかったので絶賛していたところ、HDさんこと、Seanさんから直接私宛にこんなイラストをいただいたので、さっそくみなさんにご案内したい。このイラストの魅力はペニスに尽きると思う。ペニスの大きさと、モデルのポーズが、エンクロージャーの快楽のすさまじさを饒舌に表現している。
 近年私は自分がラバーフェチであると同時に、ペニスフェチであることを自覚している。だからペニスがラバースーツ越しに浮かび上がるSeanさんの描くイラストは非常に私を興奮させる。
 こんなときに思うのは、ペニスの気になってみるということだ。きついスーツと皮膚のあいだにぺちゃんこになりながらも、なお内面からの血液の流入によって膨張を続ける、感動的なエネルギーの横溢。そこにはエロティシズムを超えた人間の生きる力そのものがみなぎっているようだ。
 そもそも私のフェチはブーツフェチからはじまったわけだが、よくよくブーツを観察すると、くるぶしあたりの部分は亀頭のくびれをほうふつとさせる。足首から先が亀頭で、ひざのほうが根本になる。たいていブーツの足首には一、二本のシワが寄っていて、そこが包皮の終端に見える。黒光りするレザーがふくらはぎをまとうその表面は、ピント張りつめ、真ん中の縫い目のラインは太い血管である。レザーブーツは足という運動するエネルギー体を無理矢理に梱包し閉じこめる、ペニスの包皮のアナロジーである。しかしご覧の通りその包皮はぴんぴんに張りつめ、まさしく勃起しているようだ。黒光りする怒張したペニスを二本、あしもとに堂々と垂れ下げながら、若い婦女子が街を歩いている、私にはこの季節、そのように外界の光景が認識される。
 技術の進歩により、私好みのブーツが非常に安く手にはいるようになったようで、文字通りあらゆる女性が黒の合皮のストレッチロングブーツを履いている。
 ブーツを履くのは女性だが、なぜ女性がブーツを履くかというと、結局彼女たちも、ペニスが欲しいからに違いない。ブーツの魅力がペニスへの欲求に起因していることは本能的に知っている女性たちが、自らの持つペニスへの永遠の憧れを、ブーツに託しているのである。そこまでいかなくても、自分をオシャレに、かっこよく見せたい、ハードに決めたいときには、ペニスのテイストが込められたこのブーツを履いて、ある種の男らしさをファッションに利かせる。
 ブーツの魅力はペニスみたいだから。そういうことをしみじみと思う今日の話題でした。

Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com