女性ホルモンで美しく賢く

 三井住友海上24万円。アクサ9万円。これはほとんど同じ自動車保険の見積額である。同じというのは保障内容が同じで、年齢担保条件も、使用目的、仕様距離も全部同じである。
 価格差のナゾもう一発。近所の文具屋880円(老夫婦経営)。アスクル233円。これはファックス用感熱紙。同じ、B4サイズの30メーター巻きだ。
 世の中、高額商品でも低額商品でも、買うところによってこんなに価格差があるのである。
 いったいどうしてこんなに値段が違うのか? 特に年配の人に、自動車保険の価格差を説明するのは非常に困難だ。インターネットで、自分で申込をしないといけないんだよと説明したいが、それでは分かりにくいので、漢字の損保会社のほうは代理店の人に全部任せられるんだけど、アクサは申込みから何から全部自分でやらないといけないんだよ、だから手間賃みたいなものなんだよ、という。
 ホテルとかで繁忙期と閑散期の部屋代が違うのはまあ仕方ないだろう。しかし、自動車保険の金額だけは私としても腑に落ちない。もちろん、インターネットを使えないとか、時間がないひとにとっては、代理店お任せコースがたいへん助かる。しかし2倍近くも違うとなると、さすがにどうか。割高感は否めない。2年もすれば、パソコンを買ってネットをつないで云々という投資を回収できる差額である。
 昔、共産圏のどっかの国の宰相が日本は成功した社会主義のモデルだと言ったらしいが、割高な国内サービス会社へほとんど喜捨といっていいようなカネの使い方をして、たがいに生活を扶助しあうという、なんともうるわしい国民性であることよ……。
 タダそれに、年収300万とかいわれて、どんどん政府与党のオッサンたちが積み上げる借金を背負わされる若い世代がどこまでついてこられるかどうかだ。すでにパラサイトシングル、ニート(Not in Employment, Education or Training)、少子高齢化といった形で、彼らのレジスタンスは確実にはじまっている。

Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com

 恋をすると女性は美しくなるという。これは女性ホルモンの分泌が活発になり、女性がより強く男性を惹きつけようとするからだ。美容液などには女性ホルモンのはたらきを効果にうたう製品が珍しくない。また最近では女性ホルモンの研究が進み、どうやら痴呆にも効果があることが分かってきた。アメリカではアルツハイマー病の治療薬の研究で女性ホルモンがさかんに用いられている。
 男性でも恋をして活発になった男性ホルモンが脳にはいると、女性ホルモンに変化して脳の働きを活性化するらしい。若く美しくなおかつクレバーになるためには、まず恋をして、男女を問わず女性ホルモンを脳へ導こうというわけだ。
 女性ホルモンに、男女問わずよいはたらきがあることが分かったところで、私らフェティシストにはどうなのかを考えてみよう。
 そもそもラバーに興奮するというのは、女性ホルモンの分泌を促すような意義があるのだろうか? 別にアピールしたい異性がいるわけでもないから、女性ホルモンは出ないのだろうか? 私はそうは思わない。ラバーを着るときに、少なからずナルシスティックな欲望も満たしたいということから鏡を見る。鏡のなかのラバー姿の自分は少しでも美しいほうが興奮は高まるから、自分を惹きつけるために女性ホルモンが出るのではないか?
 それに、女装する人だって、きれいな姿をより多くの人に評価してもらいたいと思っていないはずがない。だから女装をするということ自体がすでに女性ホルモンが分泌されやすい行為であり、恋をしているのと同じような状況といえる。
 わたしの例を話すと、ラバーを着ると気分的に女っぽくなる(受動的になる)。ラバーに恋というより、ラバーを着た自分に恋をするような感じだ。もともとM体質なので、ラバーを着るとますますその傾向が強まる。ラバーに犯されるごとに美しくなる(と、勝手に思いこんでいる)、ひとりでしあわせなわたしである。
 ラバーに恋をすれば、若く美しく賢くなれるなんて、夢のような話だが、女性ホルモンがラバーを契機に分泌されるのであれば、あながち夢物語でもない。ラバーを着てみなさんもどんどん美しく賢くなろうではないか。

Text by Tetsuya Ichikawa
Alt-fetish.com